足を踏み入れただけで、雷鳴が轟き、雨が降り出す森がある。
そんな話を昔、母から聞いた事があります。
前編 からの続きです。
鉄砲水によって崩落した藤倉沢林道。
「雨の降る森」候補地である太鼓山西側へ行くには、藤倉川を渡らなければなりません。

緩やかな斜面を探し、川岸に下ります。

雪融け水の影響で流れは速く、水深は50cmほど。
想定より水量が多く、履いてきた長靴の長さ以上の水深です。

かっぱとりたくないので、気合いを入れ、冷たい雪解け水を裸足で渡ります。
「かっぱとる」とは、東北地方の方言で靴を濡らすの意です。
語源ははっきりしませんが、河童捕るから来ているのかも知れません。

カメラを濡らさないよう、滑る川底を慎重に渡り対岸へ。

何とか突破。
もう少し水深があったら流されていたでしょう。
危険なので絶対にマネをしないでください。 流されると、最悪死にます。

国土地理院の地図によれば、藤倉沢林道はここから約3.5km、太鼓山の麓まで続いているはずです。
今渡った場所を含めて、全部で4回藤倉川を渡ります。
約3.5km。 平地なら徒歩でも1時間程度で到着できる距離です。
厳しい道のりになることを覚悟し、改めて出発です。

辺りを見まわします。
伐採後、植林はされていないようです。
熊よけのため、携帯ラジオを大音量で鳴らします。

小さな滝があります。

流れは激しいです。
水の流れる音が、ラジオの音を消し去ります。

道を覆う残雪。

成長した枝が道を塞ぎます。

地面が残ってるうちは大丈夫。
時間はかかりますが、進めます。

土砂崩れが道を塞いでいます。

見上げると、崩れた斜面に木が生えています。
土砂崩れがあったのは、10年以上前ではないでしょうか。

小山になった地面に木が敷き詰められています。
車で通るための応急処置ですね。
でも、リフトアップしたジムニーくらいしか通れないと思います。

日陰には、大量の残雪。

雪の層が薄い所を選び、進みます。

残雪の上に落石。
崩れたてです。
距離をとり、慎重に通り過ぎます。

藤倉川を渡る2箇所目。

上流からの激しい流れが、太い樋管に吸い込まれています。

樋管出口では、激しい水流が川床を削り、淵を作っています。

2箇所目を無事に渡れてほっとしてます。
道が大きく流されていたら、その場で探索は中止です。

道を雪融け水が川のように流れます。

脇にある山の上からも注いでいます。

流れる水はきれいに澄んでいます。
まるで清流のよう。

ふきのとう街道。
ふきのとうは東北の方言で「ばっけ」ですが、津軽では「ばっけたづ」とも呼びます。
「ばっけたづ」は少し成長したばっけを指す言葉で、「たづ」は「立つ」のようです。

「とうが立つ」という言葉の「とう」は、ふきのとう、蕗の薹の「薹」、茎のことです。
「薹が立つ」は旬が過ぎた意味に使われますが、「ばっけたづ」、蕗の薹の茎は美味しいです。
道の先に台形の山が見えてきました。

ナビで確認すると、盆台森のようです。
形から名付けられたことがわかりますね。

藤倉川に目をやります。
落差は10mほど。
これだけ川から離れていれば、ラジオが良く聴こえます。

また枝が通行を妨げます。
雪より枝が障害としては厄介です。

地滑りして、道全体に地割れができています。
傾斜がなだらかなため、崩落せずに留まっています。

崩れないよう、息を殺して通過。

残雪。
融けて雪の層が薄くなっているのが救いです。
気温は20度ほど。 この瞬間も更に融けています。

藤倉川がまた近づいてきました。

空を見上げると、中森の上を旅客機が通過しています。

道の上には、いたる所に清流とふきのとう。
柔らかくなった地面に足を取られます。

山全体がこちらに崩れてきているようです。

藤倉川を渡る3箇所目です。

上流に砂防ダムが見えます。

砂防ダムが水の流れを緩やかにして、道を守っています。

切り通しが現れました。
路面の質感も変化し、まるで古道の様相です。

雪が明らかに深くなりました。

路面に生える木も増えています。
3つ目の樋管から先は、廃道になってから相当年数が経っているようです。

ここでラジオが壊れてしまいました。
熊よけに自転車のベルを鳴らしながら進みます。

道と山の境界が不明瞭になってきました。

枝に絡まりながら、強引に足を運びます。

完全に雪山です。

ここで自転車との別れを決断。
熊よけのベルを手放すのは痛手ですが、道路の真ん中に駐車して先を急ぎます。
邪魔だったらクラクションを鳴らしてください。

身が軽くなりました。
発見です。 雪山では自転車を押し歩きしない方が楽です。

藤倉川との落差は30mほど。
雪庇があるかも知れないので、一歩一歩が慎重になります。

藤倉川対岸には、中森の尾根が見えます。
尾根伝いに進むと太鼓山です。
太鼓山山頂に確実に行きたい方は、中森からの縦走ルートが無難かも知れません。

雪の登りが続きます。

廃道ではなく、これは山です。

久しぶりに遭遇する、道らしい景色。
確かに道ではありますが、古道のような佇まい。
過去にタイムスリップしたような気分です。

大きく崩落。
歩ける幅が残ってるだけ幸運です。

藤倉川との落差は40mほど。
高い所は苦手ですが、平常心を保ち静かに通過。

登り傾斜が緩やかになりました。
尖った名もない山の向こうが、太鼓山のようです。

右手の斜面に目をやります。
名前のない山の山頂です。

標高が高いせいか、雪が深いです。
油断すると40㎝くらい足が埋まります。

スローペースで雪を抜けたら、一目でわかる嫌な景色。

道が消えました。

轟音を立てながら、激しく水が流れています。

ナビで現在地を確認。
藤倉川を渡ってから3時間。
まだ2km弱しか来ていません。

流れている川は、藤倉川ではありません。
地図上では、ここに川は存在しません。
雪融け水が溜まり、天然のダムができたようです。
近づいて確認すると、水深は深く、流れも急。

対岸に渡ることは不可能です。
向こうに見える山は、中森から続く尾根。
太鼓山を遠望することさえ叶いませんでした。

ぬかるんだ道を、足取りも重く引き返します。

こんな高所にもカエルの卵。

雪融け水が残ってるうちに、カエルに変態できれば良いんですが。

動物の足跡。 行きには無かったはずです。
熊との遭遇を避けるため、足跡には気をつけていました。
形がきれいに残っているので、たったいま通ったとしか考えられません。

大きさは小さいです。
形を調べると、狐のようです。

昔話では、狸に化かされても身体に害は及びませんが、狐に化かされると生命を落とすこともあるそうです。
化かされないよう、気を張って帰ります。
自転車と再会。
熊よけにベルを鳴らしながら下山します。
冒険を共にした自転車に愛着が湧いたので、名前をつけました。
「
名前のない馬 」号です。

崩落したスタート地点に到着。
3時間かかった道のりも、下り坂の帰りは1時間でした。

雪融けが進んだため、水かさが増しています。
水深は60cm。
自転車を杖代わりに、バランスをとりながら何とか渡りきります。

6日目の結論です。
藤倉沢林道は、崩落して通行不能だったため、何もわからなかった。
以上です。
ここから車を駐めた場所まで、上り坂を更に30分押し歩きました。
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