妙堂崎のトドロッポ
- 2023/03/01
- 20:45
鶴田町にある県指定天然記念物、トドロッポです。

場所はこちらです。
地図で偶然見つけた、トドロッポ。
不可思議な響きです。
いったい何なのでしょうか。
鶴田町観光ウェブマガジン「メデタイ・ツルタ」には、こう記されていました。
☞ 鶴田町観光ウェブマガジン「メデタイ・ツルタ」 県指定文化財「トドロッポ」推定樹齢は350年、樹高約30メートル、目通り幹範囲が6メートルもあるモミの木です。
「トドロッポ」とはアイヌ語で「トドマツ」という意味で、トドロッポが昔モミの木ではなく「トドマツ」と思われていた時にそう呼ばれ始めたのが始まりだと思われます。
どこかぼかしたような書き方。
断言できない理由があるのでしょうか。
実物を見ないことには何も始まりません。
2022年11月中旬、現地に向かいました。
地図では、この辺りのはずです。

ありました。
トドロッポです。

樹高30m。
これは、大きい。

個人の所有物なので、敷地への無断立ち入りは厳禁です。
以前は6本あったそうですが、現存するのは1本だけのようです。
モミの分布は、秋田県以西のようなので、評判になるほど珍しがられたのでしょう。
大したおやげ (津軽弁で富裕な家の意、大宅 おおやけ) ですね。

案内板です。
昭和59年 (1984年) に推定樹齢350年ということは、現在の推定樹齢は390年ですね。
「トドロッポの呼称については諸説があって明らかでない」。
センシティブな問題を孕んでいるようです。

調べました。
下の画像は、国立国語研究所で公開されている、文化元年 (1804年) に上原熊次郎によって編纂されたアイヌ語辞書「藻汐草 (もしおぐさ) 」です。
右から6つめに、トトロップと記されています。
これが、メデタイ・ツルタで紹介されている説の根拠なのでしょう。
トトロップが訛ってトドロッポになった、充分考えられますね。
漢字は草書なので、「椴 (トドマツ、トド) 」かどうかわたしには判別がつきません。
椴は、北海道に自生するモミによく似た木のようです。
シラヲイと書かれているのは、白老町の辺りでその言葉が使われているという意味のようです。

☞ 国立国語研究所 日本語研究資料「蝦夷方言藻汐草」
※国立国語研究所の画像は、クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際 ライセンスのもとに使用しています。
藻汐草を編んだ上原熊次郎という人物は、松前藩がロシア軍艦長ゴローニンを抑留した事件、ゴローニン事件に関わっているようです。
ゴローニン事件は、ロシアが日本の領土を攻撃した事件、文化露寇がなければ起きなかった事件です。
文化露寇をきっかけに、弘前藩士72人が斜里で亡くなる悲劇も起きています。
隣国ロシアとの緊張が高まっているいま、令和露寇が起きないように、わたしたちは知恵を絞り備えなければなりません。
☞ Wikipedia 「ゴローニン事件」
☞ Wikipedia 「文化露寇」
☞ Wikipedia 「津軽藩士殉難事件」
こちらは、上原熊次郎が亡くなってから27年後、嘉永7年 (1854年) に刊行された「蝦夷語箋 (えぞごせん) 」です。
右から5つめに、トトロップの文字があります。
漢字の読み仮名として、草書で「かや」と書かれています。
この「かや」は、おそらく「榧」で、この木もモミに似ているそうです。

☞ 国立国語研究所 日本語研究資料「蝦夷語箋」
榧の植生は、宮城県以西のようです。
上原熊次郎は松前生まれのようですから、椴を榧と書く可能性は低いと思います。
藻汐草から蝦夷語箋に書き写す際に、担当した人物が間違ってしまったのでしょう。
蝦夷語箋を編纂したのは、椴を知らず、椴を榧と思い込んだ宮城県以西の人物だったと推理できます。
椴と榧、草書にすると似ているような似ていないような。
どちらも、藻汐草の文字とは違うように見えます。

使用した毛筆フォントは、書家の青柳衡山氏が作成されたフォントです。
無料で配布されています。
興味のある方はお試しください。
☞ 武蔵システム 無料フォント
国立アイヌ民族博物館のアイヌ語辞典によると、椴は「フプ」と呼ばれていたそうです。
トトロップについては、「山内に群生しているもの、か」と、ぼかして記されています。
☞ 国立アイヌ民族博物館 アイヌ語辞典「トドマツ」
そもそも、藻汐草の訳の精度そのものが怪しいのかも知れません。
トドロッポという名前は、そもそもアイヌ語ではなく、青森県にも自生するアオモリトドマツに似た珍しい木が6本あったので「トドロッポン」と呼んだのでは、というわたしの思いつきの説を披露してこの記事を結びます。
妙堂崎のトドロッポは、調べれば調べるほど謎が深まる、不可思議な存在でした。

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